statement

最高の波に乗ったサーファーは、まるで自分が海そのものになってしまったかのような一体感を味わうそうです。しかし危険は付き物で、不意にボードから落ちてしまったら生きて帰れない程の大惨事になるかもしれません。だから彼らはあらゆる波を観察し、場合に合わせて敢えてライディングを途中で降りることもするそうです。ここで私は自分の身体をそのボードだと想像します。私が「私」に完全に一致していたら、自分を認識することはできません。そこには比較するものや、感じられる違和感がないからです。自分を確かめるには自分の姿を鏡の中へずらして見るように、「私」の場所をずらす必要があるのです。自分の姿が鏡の中に見えたという事は、こちら側とずらされた向こう側との二局の間に境界が生まれたということです。分けられたどちらの側にも「私」は感じられません。ふたつの間の境界にこそ「私」は立ち現れてくるのです。私は、私やあなたをそっと波から降ろすような装置を作りたいと考えています。いつか不意に落ちてしまうかもしれないその時まで。

2018 小沢裕子